Amazonプライムで、是枝監督の映画「怪物」を観ました。

良すぎました。

思春期の男の子の気持ちについては私は実感はできませんが、描写が丁寧だったので、共感することができました。

思春期の男子特有の、言葉の表現の少なさゆえに起きてしまう周りの勘違い、それが社会を動かしてしまうほどの力があると言うことは、怖いことだと思いました。

そういう、思春期の男子の、言葉の少なさゆえに起こす出来事を、本人が持て余してしまうがために「僕は嘘をついた」としか言葉で表現できない、そのような不器用さも感じました。

大人は心配するしかなくて、この子自身を心配する親の立場も、組織を守りたい校長の立場も、よく理解できました。若い担任の先生は保身よりも、この子のことを思っていたのに、誤解が誤解を生んでしまったことは、気の毒でした。

校長先生が、「言いたいことはラッパに込めて発散しろ」と言ったことと、校長先生のラッパの音がすごく迫力があったことが、彼女の心のうちを物語るような気がしました。世間の無責任なウワサとか、そんなものに嫌気がさしていたのだと思います。

最後の最後、我が子を心配する母をすり抜けるように、逞しく生きて、楽しく大笑いしながら青空の下を走り抜ける息子が、新しい息吹のような、力強い若木のような、世間に汚されていない新たな生命力といった様相で、閉塞感を打ち破ってくれました。

この少年の将来は、次第にあの担任の先生のように、理想を持ちながらも現実に折り合いをつけさせられて、校長のように諦めることが増えるのかしらと、なんだか社会の嫌な部分も感じましたけどね。

社会を生き延びるためには、ラッパを吹くような対処法が必要になるのでしょう。